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年度後半には景気回復の手応え=白川日銀総裁-5月全国懇談会

2011.05.26

5月25日、白川方明日本銀行総裁を講師にお迎えし、全国懇談会を都内のホテルで開催しました。
白川総裁は「大震災後の日本経済:復旧、復興、成長」と題してご講演。その中で、「日本経済は
現在、強い下押し圧力にさらされている」との認識を示すとともに、景気の先行きは「本年度後半には、
V字回復とはいかなくても、ある程度、回復の手応えが感じられる状況になっていく」との見通しを述べ
られました。講演要旨は下記の通りです。

白川総裁のご講演動画(全編)を配信します。
また、ご講演抄録を会報誌「J2TOP」7月号(6月25日発行)に掲載いたします。
なお、白川総裁ご講演の全文テキストは日本銀行のホームページに掲載されています。

【白川日本銀行総裁のご講演要旨】
   〇サプライ・チェーンが寸断
日本経済は、昨年秋口以降の踊り場的な局面から脱し、再び改善テンポを速めようとしていたが、今回の地震、津波、原子力発電所の事故によって、強い下押し圧力にさらされている。3月の鉱工業生産指数は前月比15%減と、単月では統計作成以来最大の落ち込みとなった。
工場、発電施設の被災は、部品・素材のサプライ・チェーンを寸断し、財・サービスの供給能力が低下した。その結果、輸出は大きく落ち込み、国内需要も減少している。ただし、需要自体が無くなったわけではなく、供給制約のために需要が実現できない状態に陥ったというのが実態だ。
好調な海外経済を背景とした輸出市場の拡大という、震災前まで日本経済の回復を支えていた基本的な条件に大きな変化はない。従って、日本経済の当面の最大の課題は供給制約をできるだけ早く解消することだ。

   〇年度後半には回復へ
日本銀行では、当面、生産面を中心に下押し圧力の強い状態が続くものの、サプライ・チェーンの再構築が進む下で、秋口以降、電力不足の問題も改善し、供給面の制約は和らいでいくとみている。実際、震災から2カ月半が経過した現在、多くの工場で復旧作業が進み、生産を再開する動きが広がっている。悪化した消費者マインドも、最近では自粛ムードが幾分和らぎ、4月以降、家電販売や百貨店売上高などに回復の動きが見られる。
海外経済も高い成長を続けており、年度後半には、V字回復とはいかなくても、回復の手応えが感じられる状況になり、来年度については、高めの成長が予測される。これらを数字で表すと、11 年度の実質GDPは0.6%にとどまるが、12 年度には2.9%に拡大すると予想している。

  〇「打ち出の小づち」は無い
復旧・復興の新規財政支出の財源には、日本銀行が国債を引き受ければよい、という議論がなされることがある。しかし、無から有を生み出す「打ち出の小づち」のような便利な道具は存在しない。中央銀行による国債引き受けには、財政規律の低下を招きやすいという深刻な副作用がある。
震災後、関心が持たれることが多くなった高橋財政期の日銀引き受けも、最初は「一時的」との位置付けで始まったが、やがて引き受け額の増額と通貨の膨張に歯止めが効かなくなり、最終的には激しいインフレをもたらした歴史を思い返す必要がある。(了)