お知らせ

三村新日鉄会長のご講演要旨をメルマガで配信

2008.12.16

 毎週月曜日、登録をしていただきました内外情勢調査会会員の皆様に、講師紹介、講演内容、ニュース用語解説、今週の予定(政治・経済・スポーツ・イベントなど)などをお届けいたします。
 登録はHPの「メルマガ登録」ボタンをクリックしていただきます。ID、パスワードの入力で、メールマガジン登録画面が表示されます。必要事項をご記入の上、申込みボタンをクリックしていただきますと登録完了です。
 
 新日鉄の三村明夫会長のご講演要旨を下記の通り12月19日号で配信しました。
  
 三村明夫新日本製鐵会長は15日の全国懇談会で金融危機に見舞われている現在の世界経済の状況を「足元はパニック状況」とし、このパニック状況は半年程度で収束するとの見通しを示した。三村会長は、日本企業を取り巻く環境の変化への対応として、「どのような企業(または産業)も一度は基本構造を変えるような合理化に遭遇する」と説明。リストラを進める際しては、「聖域なき合理化はあり得ない」との考えを披露した。概要は以下の通り。

演題:現下の経済環境と日本・日本企業の役割

【経済パニックは半年で収束】
 
 今回の金融危機に端を発した世界経済の足元は、完全なパニック状況だが、世界の協調体制は整備されており、各国とも思い切った政策手段を活用している。このパニックは半年程度で収束するのではないか。今回の危機の原因は、2002年以降の5%程度という史上例を見ない速いスピードでの経済成長。この成長は、需要増という「光」と地球温暖化やエネルギー・食糧価格の高騰という「影」の部分をもたらした。

 今回の危機は、こうした負のエネルギーが地球のどこかに蓄積し、爆発したことで起きた。地球からの警戒信号だ。構造調整に3年はかかるだろう。ただ、日本は欧米列国に比べ、金融機関の被害が相対的に少なく、資源・エネルギー価格も06年の水準で落ち着いた。日本企業は「(設備や債務など)3つの過剰」を持たず、日本は世界経済の重心がシフトするアジアに位置している。現在の不況は、バブル崩壊後のような出口の見えないものではなく、数年後には持続可能でマイルドな成長の世界経済が実現するだろう。

【聖域なき合理化はあり得ない】
 
 今回の金融危機で受けた3つの印象がある。1つは、不況期こそ企業が本当の姿を現すこと。高額の設備投資や企業買収を行った企業は、厳しい調整期に必ずペナライズされる。もう1つは、企業の成長戦略と財務構造の改善をどうバランスさせるのか。最適バランスは環境で異なるが、企業として取るべき一定の許される範囲があるのでは。3つ目は、世界的に大規模な業界再編が進むことだ。

 社長就任時の新日鐵の経常利益は、1700億円。2007年は5600億円。収益向上の原因は、03年以降の発展途上国の成長に伴う鉄鋼需要の伸びなどだが、各社はこれまで、血みどろの合理化をやってきた。
 
 1985年に円が1ドル=180円ほどに急騰した時、わが社は大合理化計画を作った。13基の高炉の休止・破棄と固定費の40%削減。人員はかつて6万7千人いたのが、06年に1万7千700人に減った。どのような企業・産業もその基本構造を変えるような合理化に必ず1回は遭遇する。むしろ、遭遇しないと生き残れない。

 ただ、合理化には弊害もある。大切なのは「聖域なき合理化はあり得ない」こと。投資が不可欠な部門を組織も個人も覚えておき、それが可能になった時期に元に戻す。これで初めて合理化は完成。アルセロール・ミッタルの誕生からは数々の教訓を学んだ。私どもは、海外の経済成長を自らの利益成長に組み入れるグローバル企業に脱皮したい。

【日本は世界の潮流への対応を】
 
 日本は現在、大きな構造変化のただ中にある。資源制約が今後も続く場合は、将来的に日本の製造業の特徴がなかなか生かせない時代になる可能性があるが、「物づくり立国」として生きる以外に日本の将来はない。

 今後の日本の課題は、変動し、変化する世界経済への日本社会の対応のスピードをいかに早めるか。企業も同じだ。深刻なのは、「日本の存立基盤を危うくするような世界の潮流変化に、日本がどう対応するか」に関し、正解が得られていないこと。早急な対策と行動が求められる。(了)