徳島版「SDGs」で国難打破=内外情勢調査会で講演―飯泉徳島知事

 徳島県の飯泉嘉門知事は6月5日、徳島市内で開かれた内外情勢調査会で「とくしま『未知』しるべ戦略~徳島版『SDGs』~」をテーマに講演した。日本全体が人口減少と災害列島の課題に直面する中、「地方創生の旗手と称される徳島が、これからの未知の世界の羅針盤となることが期待されている」と述べ、徳島県版の持続可能な開発目標(SDGs)を掲げた。具体的には、人口減少、災害対策、超スマート社会、スポーツ大会によるレガシー創造、持続可能社会の五つの柱でそれぞれ具体的な対策を示し、課題解決への処方箋を明らかにした。

 人口減少で、高校生や大学生ら若者の東京への転出が超過している現状を指摘。県内での起業・就業機会の創出や政府関係機関の地方移転の必要性を挙げ、「ポスト発光ダイオード(LED)」と呼ばれる医療、研究用の光応用製品の研究開発などの促進へ意欲を示した。また、全面移転の可否を検証している消費者庁についても「これまで同庁の徳島オフィスで10以上の主要プロジェクトが展開され、成果が上がっている」と強調した。

 災害対策では昨年相次ぎ発生した地震や豪雨を「災害列島の様相」と形容。特に大阪府北部地震が直下型だったことに触れ、「中央構造線がある徳島も直下型地震に備えなければならない」と指摘。全国で初めて中央構造線活断層地震対策の被害想定を策定したことや、平時から災害発生を見据えた「事前復興」の必要性を説いた。また、吉野川などで繰り返された水害に苦労した歴史を振り返り、「過去の課題を一気に解決する必要がある」として、治水ダムの再整備や無堤防地区の解消を早期に図ることを明らかにした。

 「超スマート社会」の到来で、次世代の移動通信システムである「5G」や「モノのインターネット(IoT)」の必要性が増すことから、知事は「実装に移していかないといけない」と述べ、IoTを活用したタクシー配車サービスや、定型業務を自動で行う「ロボティック・プロセス・オートメーション(RPA)」の県庁での全面導入を行う計画を示した。

 東京五輪・パラリンピックについて、知事は「開催後の景気腰折れ対策が懸念されている」と述べ、対策としてマイナンバーカードを活用した「自治体プレミアムポイント」実施を国へ提言。マイナンバーカードにたまったクレジットカードポイントや航空会社のマイルを「県ポイント」へ換算できるようにし、1ポイント1円として県産品購入が可能となるような仕組みも提案した。

 持続可能社会に向けて、飯泉知事は「全国でいち早く脱炭素条例を制定した県」とアピール。SDGsが掲げる異常気象対策などを加速させるため、水素エネルギーのさらなる活用や、2030年度における温室効果ガス削減目標を、国を上回る40%と決定したことをはじめとする諸施策で、「徳島県版SDGs」を推進すると説明した。(了)