「新時代の価値観つくる」=平井鳥取知事、内外情勢調査会で講演

 鳥取県の平井伸治知事は7月2日、鳥取市内で開かれた内外情勢調査会で「令和新時代への挑戦」をテーマに講演した。県の歴史を振り返り「自然の中で人々が支え合って生きてきた。この点で勝負すれば、大都会とは違った地域づくりのモデルを提案できる。新しい時代の価値観を鳥取県からつくっていく」と述べ、産業や地域振興、人口減対策などについて県の施策や展望を示した。

 県の産業は、リーマン・ショック以降低迷が続いていたが、企業誘致や経営革新を促す助成制度が奏功し、製造出荷額が2013年の約7000億円から、4年間で約8000億円(速報値)まで上昇。平井知事は「急速に回復してきた」と評価し、「次の4年間で、これを9000億円に伸ばし、新しい時代の弾みにする」と語った。

 目標達成に向け「企業誘致よりも、県内企業の挑戦に資金を割く助成制度に組み直す」と方針転換を明言。「従来は(助成制度に)雇用要件があったが、県内中小企業は人が採れない時代になっている。そこで、雇用か付加価値を増やすかのどちらかで挑戦するといった条件に変え、使いやすいようにする」と述べた。その上で、環境や観光関連、IoT(モノのインターネット)を使った事業など重点分野を設け、「新しい産業を創造する企業に助成を拡大する」と説明した。

 また、ローカルベンチャーの起業を応援する補助金や、実際に起業した事例を紹介し、「夢を実現する場所をつくることが大切だ」と語った。

 農業についても産出額が「急成長している」と評価。和牛やナシ、コメなどの好調が背景にあるといい、農業産出額を17年の約800億円から23年には900億円まで伸ばす目標を発表した。

 このうち、収量単価がよいナシの品種「新甘泉」について、八頭町と協力して取り組んでいる新規就業者向けの補助事業を紹介。収穫まで年数がかかるナシの苗木を新規就農者に代わって地元の生産組合が1年間育成し、就農後間もなく収益を得られるようにする仕組みで、「現に若い方々が入植するようになっている」と、手応えを語った。

 子育て支援関係では、10月から国の幼保無償化が始まることを受け、「県が先んじてきたことに国が追い付いてきた」と述べ、「全国の先をいく子育て政策をする」と宣言。市町村と研究会を設け、今後検討を進めていく考えだ。

 移住をめぐっては、22年までに移住者1万人を目指し「関係人口にポイントを置く」と説明。東京都や大阪府に開設した「とっとり歓迎案内所」を通して移住潜在層の掘り起こしに努める方針を示した。関連して、▽人工知能(AI)面接の導入費補助▽採用試験を受ける県外学生への交通費支援▽県外転出者らに就職情報や県の魅力などを発信するアプリの開発―といった取り組みも紹介した。

 最後に、地元で新田開発などをした鹿野藩の亀井茲矩(これのり)を引き合いに「先人たちの志しを引き継ぎ、産業や地域を興し、未来の礎づくりに取り組まなければならない」と語り、協力を求めた。(了)