「危機・社会の分析を」=内外情勢調査会で講演―佐竹秋田知事

 秋田県の佐竹敬久知事は10月27日、秋田市内のホテルで開かれた内外情勢調査会で、「時代の変化・深読みすれば」と題して講演した。「日本は分析しないですぐ感情論だが、今ある危機や社会の分析を行い、どうするかが重要だ」と述べた。

 佐竹氏は新型コロナウイルス収束後を含めた社会変容への対応について言及。秋田県の小中学生の学力がトップクラスと評されているものの「これ(学力)で売り込んだって何もない」と指摘。ゲームを制作し、数千万円を稼ぐ中高生がいることを挙げ、今必要なのはIT教育だと訴えた。

 「世界を押さえているのはグーグルやフェイスブックなどの企業でありメーカーではない。彼らと結び付くことで、子供も就く(就職などをする)だろう」と述べ、来年度から海外のIT企業と協力した教育を実施することを検討していると明かした。

 日本では大企業がわずかで、中小企業が多数を占める。これについては「世界標準から言えば何も意味がない」と主張。県は中小企業に対し、競争力強化のため、M&A(合併・買収)経費に助成しており、「一企業でも、どこもやっていない事業なら伸びる。しかし、(複数の企業が)同様の事業を行うなら、まとまったほうがいい」と語った。

 県内の労働人材確保については、「企業が賃金を出さなければ、人は集まらない。安い賃金で若者に『東京へ行くな』とは無理だろう」と訴えた。佐竹氏は県への誘致企業に本社並みの給料を出すことを求めているといい、「地元企業も腹をくくる必要がある」と求めた。

 将来、人工知能(AI)やロボットにさまざまな作業が代替される将来を見据え、「スキルのない人はどうするか。まさに格差は拡大していくだろう」と述べ、個々人の能力の開発を訴えた。

 日本が海外と比べ、技術面で出遅れている一因として、2004年の国立大学法人化を挙げ、「先端技術が変わっている時に、日本は研究能力を下げた」と批判した。

 高等教育の研究能力を上げるよう求めるとともに、「今でも(自分は)大学の参考書を使って、コロナの感染指数などを計算している。人間は死ぬまで学習。この習性があれば日本は立ち直れる」と強調した。(了)