「交渉、発信力」で輸入規制全廃へ=内外情勢調査会で講演―内堀福島知事

 福島県の内堀雅雄知事は11月24日、福島市内で開かれた内外情勢調査会で、「FUKUSHIMAの未来」と題して講演した。東京電力福島第1原発事故に伴う諸外国の県産農林水産物の輸入規制に対し、「交渉する力」「発信する力」により規制撤廃に導いてきた経緯を説明。14カ国・地域が依然残す規制の完全撤廃に向けて全力を尽くすと強調した。

 原発事故後に55カ国・地域が実施していた輸入規制は、9月に米国が撤廃したことで14カ国・地域に減少し、内堀知事は「この10年間で劇的に前に進んだ」と指摘した。

 具体的なエピソードとして、昨年9月、菅義偉首相(当時)の県内視察に同行したことに言及。昼食中に「友好国のアメリカが10年間、輸入規制をかけたままでいいのか」と訴えたという。この後、菅氏がバイデン大統領との首脳会談で規制撤廃を要請し、実現につながった。

 独自にアラブ首長国連邦の食品安全担当の閣僚と会談し、自ら安全性をアピールするなどして規制撤廃に導いたことにも触れ、「何としても14(カ国)をゼロにするため政府に働き掛け、県としてもさまざまな活動をしたい」と強調。引き続きオンラインを活用したトップセールスなどに取り組む意向を示した。

 福島第1原発の処理水を海洋に放出する政府方針について、漁業者らが反対していることには「当然だ」と述べる一方、地元自治体をはじめ、タンクが敷地にたまり続けることに不安を抱える人もいると指摘。「葛藤に向き合う日々で、未来の子どもたちにとって最良の選択は何かを真剣に考え抜いた」と振り返り、理解を求めた。(了)