2022年8月4日(木)
民間力で「どこにもないまち」に=内外情勢調査会で講演―山本前橋市長
前橋市の山本龍市長は7月22日、内外情勢調査会群馬支部の懇談会で講演し、市民や民間の力を活用したまちづくりを豊富な事例を交えて紹介した。地方都市の生き残りに向け、「スペシャルなことをして『どこにもないまち』をつくっていかなければ」と訴えた。
山本氏は、人口減少や国際情勢の変化などを背景に、「日本の未来はどうなるか分からない。行政組織がこのまま継続できるのか危機感を持っている」と指摘。3期目までに取り組んできた、効率化によるコストカットや職員の削減、民間活力の導入によるまちづくりを挙げ、「緊急性が高くて重要なことだけでなく、緊急性は低くても重要なことにお金を使うことが必要だ」と説明した。
山本氏によれば、前橋市はこれまで、江戸時代の利根川の治水から第2次世界大戦中の前橋空襲まで、4回の危機をいずれも民間の力で乗り越えてきた。少子高齢化やデフレといった現在の「5回目の危機」に際しても、「市民がつくったものでチャレンジしていく。すべての危機を乗り越えるのは『市民力』だ」と力を込めた。
例えば、市のシンボルの一つ赤城山では、古民家を活用した若者による観光振興や、移住者による新規就農が始まっている。山本氏は「あきらめていた土地が、かっこよく稼げる土地になってきた。若者が戻ってこられるような市にするのは大人の責任だ」と出席者に協力を呼び掛けた。
市民力に加えて発展の大きなカギを握るのは、最先端のデジタル技術活用だ。市は、マイナンバーカードを活用した個人認証システム「まえばしID」の構築や、独自の通信網整備の検討などを進めてきた。まえばしIDの活用により、市民一人ひとりの状況や特性に応じたきめの細かい行政サービスが提供可能になるという。
「時代の変化に翻弄(ほんろう)されるのではなく、自分たちが変化をつくる」と強調。「妄想」と断りつつ、隣接する群馬県玉村町に空港を建設する構想を紹介し、「ビジョンを語り続けることが人を動かす」と講演を締めくくった。(了)