個人を起点に社会つくり直す=内外情勢調査会で講演―達増岩手知事

 岩手県の達増拓也知事は11月29日、盛岡市内で開かれた内外情勢調査会で、「岩手150年と今後の展望」と題して講演した。「岩手に関わる人たち一人ひとりを起点にして、地域、職場、市町村、県、そして国や国際社会をつくり直すことが可能になっているのではないか」と語った。

 達増氏は、明治・大正時代に、先進的思想を持ち、全国や世界で活躍した岩手の先人を紹介。新渡戸稲造が、学校に行けない子供のために無料の学校をつくった例を示し、現在、東日本大震災で親を失った子どもを支える「いわて学びの希望基金」は、「新渡戸稲造の精神を受け継いでいる」と指摘した。また、宮沢賢治は作品や著書の中で、持続可能な開発目標(SDGs)の原型といえるものを発信していたと説明した。

 昭和時代には、度重なる台風や津波などの災害を乗り越えつつ、東北新幹線や花巻空港など高速交通網が整備されたことを示した。平成初期は、県内での複数の全国的、世界的イベントの開催を経て、県勢発展や国民生活が向上していく歩みを振り返った。

 東日本大震災からの復興については、復興事業が終える一方、残る複数の課題を指摘。被災者の心のケアでは、「まだかなりの数の相談件数がある。時間の経過に従い、被災者が抱える問題が複雑化、多様化している」と述べた。また、震災の経験や教訓を国内外に伝える機会として、「国連防災世界会議」や「三陸防災復興プロジェクト」での発信を紹介した。また、新型コロナウイルスへの対応や、医師不足の解消への取り組みについても述べた。

 人口減少問題については、働きにくさや結婚、出産しにくさなどの「生きにくさ」で生じているとの認識を示した。「生きやすさに変えるべく全力で取り組まなければならない」と述べた。

 ただ、「人口減少=地方の衰退というイメージがあるかと思うが、それは違うのではないか」と指摘。全国、世界的に活躍する県出身アスリートや文学作家、企業など例に、「個人が岩手をベースにして、経済的にも社会的にも全国や海外で活動できるようになった」と述べ、「誰もが希望を持てる岩手であり続けたい」と締めくくった。(了)